机の上にハーブの種がある。
水耕栽培(すいこうさいばい)の実験(じっけん)キットの様なものだが、果たしてどうか。
しばらく開封(かいふう)もしないで置いてあった。
ふいに思い立って、水と栄養を加えて、土をかぶせてみる。
芽が出た。
何とも愛くるしい。
小さいながら、生命が確かに宿(やど)っている。
スクスク育ってきた。
陽のよく当たる方を向いている。
ヒマワリかっ!
ミントの成長を見るのが楽しくって、やみつきになった。
ワサワサしてきた。
今更ながらに説明書なるものを読んでみる。
“5cmぐらいまでの間に間引(まび)きすること”
何と!
強きものを生かすために、弱きものを捨て去れと、あなたは言うのか。。
断腸(だんちょう)の思いでついばむ。
そして、かじる。
ミントだ。
まぎれもなく、ミント。
何も話せないミントから
「美味しく育ててくれてありがとう」って聞こえた。
大人の勝手な解釈(かいしゃく)。
もうこんなことはしたくないと、再び栄養剤(えいようざい)を添加(てんか)。
復活。
また多くなってきたので、今度は露地栽培(ろじさいばい)に移植(いしょく)。
成功。
これは革新的(かくしんてき)ではないだろうか。
すっかり気を良くしたボクは、株(かぶ)分けして、スタッフにあげてみた。
そんなボクなりの水耕栽培は、最後の株を分けた時、
突然に終わりを告げた。
間引きしすぎた。。
ミントさん、ごめんなさい。
意気消沈(いきしょうちん)しているところに、追い打ちが来る。
確かに、胃の調子が悪かった。
逆流性食道炎(ぎゃくりゅうせいしょくどうえん)なるものの疑(うたが)いがあると言われた。
日頃の不摂生(ふせっせい)を見つめ直す。
喫煙(きつえん)、お酒、刺激(しげき)の強い食生活。
ミントのはかなき生命と折り重ね、物思いにふけながら、ふと机に戻る。
「体のためにたばこはひかえめにしてください」
メンバーからの贈り物(おくりもの)。
泣ける。
スクスクと育つミントをボクが思っていた様に、
メンバーはボクのことを思ってくれていたのだなぁ。
たまに、「代表が倒(たお)れたらどうするんですか」と言われる。
控えめにしなければいけないのに、灰皿っていうところがまたいい。
でも、これからは少し気にすることにしよう。
ボクはミントさんの分まで強く生きなければならないから。